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「おまかせ」「2センチ」「軽くして」美容師に伝わりそうで実は困るオーダーの話

『おまかせ』『2センチ切って』『軽くして』という美容室でのオーダーと、受け取り方に悩む美容師を描いたイラスト

美容室で、

「今日はどうしましょう?」

と聞かれる時間。

苦手な方、けっこういるんじゃないでしょうか。

髪型の名前なんて分からないし、何センチ切ればいいのかもよく分からない。

だから、

「2センチくらい」

「軽くしてください」

「おまかせで」

なんとなく伝わりそうな言葉で答える。

もちろん、それで大丈夫です。

ただ、その言葉を聞いた美容師の頭の中では、

「なるほど。で、本当はどうしたいんだろう?」

と、もう一段階カウンセリングが始まっていたりします。

今日はそんな、美容室でよくあるお客様と美容師の小さなすれ違いの話です。

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「軽くセットしてください」の“軽く”って、どのくらい?

まずはメンズのお客様でよくある会話。

カットが終わって、

「仕上げはどうしましょう?ワックスつけますか?」

と聞くと、

「じゃあ、軽くだけセットしてください」

と言われることがあります。

……軽く。

軽くって、どのくらい?(笑)

僕としては、ワックスをつけるか、つけないか。

まず聞きたいのはそこなんです。

もちろん、つける量や仕上げ方は調整できます。

でも、

「ワックスを使って、しっかり動きを出したい」

「ベタベタするのは嫌だけど、少し整えたい」

「何もつけずに乾かすだけでいい」

ここまで分かると、美容師はかなり動きやすい。

「軽く」という言葉がダメなのではありません。

その“軽く”の中身が、人によって全然違うんです。

ちなみに「ワックスつけますか?」に対してなら、「つける」「つけない」だけでも十分伝わります(笑)。

のぶさん

「2センチ切ってください」――その2センチ、本当に2センチ?

これも本当によくあります。

「今日はどのくらい切ります?」

「2センチくらいで」

僕が使っているコームには、長さの目安になる目盛りがあります。

なので、

「2センチって、このくらいですよ」

と実際に見てもらうこともあります。

すると気づくのが、

みなさん、意外とセンチの感覚が曖昧です(笑)。

もちろん普段、髪の毛を定規で測ることなんてありませんから、それが普通なんです。

ただ、美容師を長くやっていると「よく聞く数字」には、なんとなく傾向を感じます。

「2センチ切ってください」

美容師の僕としては、

「今の感じはそんなに変えたくないのかな?」

と受け取ることが多い数字。

大きく変えるより、伸びた分を整えて維持したい。

そんな気持ちが隠れていることがあります。

「3センチ切ってください」

2センチより、もうちょっと切りたい。

少し長持ちさせたいのかな?

そんな印象。

ただし、髪型によって「全部3センチ」はできません。

たとえば前髪まで本当に3センチ切ったら、

眉毛より上になっちゃうこともあります。

長さは場所によって考えないといけないんですね。

「5センチ切ってください」

これは、

「今日はけっこう切りたい気分なんだな」

と感じる数字です。

ところが、目盛りを見せて、

「5センチってこれくらいですよ」

と伝えると、

「えっ?5センチってそんなもんなん?」

「じゃあ、もうちょっと切ろうかな」

となることも。

そして、ここからときどき始まるのが、

センチの攻防です。

「5センチだと、そんなに変わらないですよね?」

「そうですね」

「6センチならどうですか?」

……。

僕、家具職人じゃないので、そこまで1センチ単位にはこだわっていません(笑)。

大切なのは、5センチか6センチかより切ったあとのバランスです。

だから美容師に伝えるなら、

「今の雰囲気をあまり変えたくない」

「今日はけっこう切りたい」

「少し短くして、長持ちさせたい」

数字より、こんな言葉の方が希望をつかみやすいこともあります。

「おまかせします」は、美容師が喜ぶ言葉?

「美容師さんなら、おまかせって言われたら腕が鳴るんじゃない?」

そう思われるかもしれません。

僕は正直、

おまかせ、ちょっと怖いです(笑)。

だって、お客様の「おまかせ」が、

本当に何をしてもいい

という意味なのか分からないから。

僕のお客様は50代以上の大人女性も多いです。

普段のスタイルやInstagramを見たことがない方から、いきなり、

「おまかせします」

と言われても、

「本当に僕に全部預けて大丈夫ですか?」

とは思います。

なので「おまかせ」と言われたときほど、僕は質問します。

今までやって嫌だった髪型はありますか?

嫌だったヘアカラーは?

今日はどこか変えたいところがありますか?

前髪?

全体の長さ?

レイヤーの高さ?

おまかせと言われたのに、むしろ質問が増える。

美容師あるあるかもしれません。

ゆっこさん

おまかせって、何も考えなくていい魔法の言葉だと思ってました……。

「ここだけは嫌」を教えてもらえると、かなり安心しておまかせできます(笑)。

のぶさん

「おまかせだけど、前髪は短くしたくない」

「カラーは暗くしたくない」

「長さは変えていいけど、結べるようにしたい」

これだけでも十分です。

おまかせするときほど、“やってほしくないこと”を一つ伝える。

美容師としては、とても助かります。

「長さは変えずに、めっちゃ梳いてください」

これもあります。

「伸ばしているので長さは変えたくないです」

ここまでは分かります。

続いて、

「でも量が多いので、めっちゃ梳いてください」

ここで美容師は少し考えます。

髪は、梳けば梳くほど扱いやすくなるわけではありません。

すでに軽くなっている毛先に対して、さらに根元付近からたくさん毛量を取れば、毛先だけがペラペラになってしまうこともあります。

まとまりにくくなったり、スタイルのバランスが崩れたり。

だから僕は、希望と違うと感じても一度説明します。

「今ここをさらに梳くと、毛先がかなり薄くなりますよ」

と。

スタイルによっては、毛量を取るよりトップのレイヤーを切り直した方が収まりやすくなることもあります。

そんなときは、

「どこを伸ばしたいですか?」

と確認して、切ってもいい部分と残したい部分を整理します。

それでも、

「いや、今日はもっと梳いてほしい」

と言われたら?

最終的には、お客様の髪です。

希望を聞いて進めます。

美容師として説明できることは説明する。

そのうえで、最後に決めるのはお客様。

……心の中で、

「変になっても知らんで」

と、ほんの少しだけ思うことはあります(笑)。

「傷んでいるところ、全部切ってください」

これも美容室ではよく聞く言葉です。

そして美容師の本音をそのまま言うなら、

「全部切ったら、けっこうなくなりますけど……」

と思うことがあります。

たとえば、

肩より20センチほど長いレイヤースタイル。

顔まわりは顎下くらいから短くなっていて、毛量もしっかり軽くしてある。

明るめのヘアカラーを続けていて、アイロンもほぼ毎日。

毛先は明るく褪色し、枝毛も目で確認できる。

そんな状態だったとします。

お客様がイメージする「傷んでいるところ」は、

色が黄色っぽくなった毛先5センチくらい。

でも美容師が髪全体を見たとき、

「ダメージ部分をしっかり整理するなら、10〜15センチくらい切りたいな」

と思うことがあります。

そこで素直に、

「15センチくらい切ります?」

と提案すると、

「えっ……私、そんなに傷んでるんですか?」

と驚かれる。

急に僕が、ものすごく酷いことを言った人みたいになります(笑)。

そして、かなりの確率で次に聞かれるのが、

「じゃあ……最低限、このくらい切ればいいよっていうのは何センチですか?」

そこで、

「最低限なら5センチくらいですかね」

と答える。

すると、

「でも5センチだと、あまり変わらないですよね?」

そうですね、と答える。

少し考えて、お客様から出てくるのが、

「じゃあ……間をとって。」

……間をとるの、お客様なんですね(笑)。

ここまでが、わりとセットです。

美容師が知りたいのは「何センチ」より、その言葉の奥

こうして並べると、

「美容師って面倒くさいな」

と思われるかもしれません。

2センチと言ったら2センチ切って。

梳いてと言ったら梳いて。

おまかせと言ったら、いい感じにして。

確かにその方が早いです。

でも美容師が質問を重ねるのは、注文にケチをつけたいからではありません。

その言葉どおりにやって、本当にお客様が喜ぶのか。

そこを確認したいんです。

「2センチ」の奥には、

「今の髪型を維持したい」

があるかもしれない。

「めっちゃ梳いて」の奥には、

「広がるのを何とかしたい」

があるかもしれない。

「おまかせ」の奥にも、

「今よりいい感じにしたい。でも短い前髪は絶対嫌」

が隠れているかもしれません。

だから、美容室で上手にオーダーしようとしすぎなくても大丈夫です。

専門用語も必要ありません。

「今の雰囲気は好き」

「今日はちょっと変えたい」

「傷んで見えるところはなくしたい。でも長さは残したい」

「軽くしたいけど、毛先がペラペラになるのは嫌」

「おまかせしたいけど、これは嫌」

むしろ、こんな言葉の方が美容師には伝わることがあります。

正解のオーダーを考えてから美容室に来なくて大丈夫です。一緒に決めるのもカウンセリングですから。

のぶさん

美容師とお客様、今日もたぶん少しすれ違う

美容師とお客様では、髪を見る視点が違います。

だから、多少すれ違うのは当たり前。

「軽くしてください」

「軽くって、どのくらい?」

「2センチ」

「本当に2センチ?」

「おまかせ」

「どこまでおまかせ?」

そんなやり取りをしながら、少しずつ完成形を探していきます。

カウンセリングって、案外そんなものです。

そして僕たち美容師も、心の中ではいろいろ考えています。

ときどきツッコミながら。

ときどき、

「それやったら変になるけどなあ」

と思いながら(笑)。

それでも最後は、お客様が鏡を見て、

「うん、これでいい」

と思えるところへ持っていく。

美容師とお客様の小さな攻防。

たぶん今日も、どこかの美容室で繰り広げられています。