「めちゃくちゃ髪が抜けるんです」
産後のお客様から、何度この言葉を聞いてきたかわかりません。
シャンプーをすると、ごっそり抜ける。
排水口がすぐに髪でいっぱいになる。
特に前髪や生え際が薄くなったように見えて、
「これ、大丈夫ですか?」
と心配になる方も少なくありません。
でも美容師として長くお客様を見ていると、産後の髪で大変なのは、抜けている時期だけではないんです。
むしろ、
新しい髪が生えてきてからの方が、髪型が扱いにくくなることもあります。
生え際から短い毛がたくさん出てくる。
前髪にしたくても、まだ長さが足りない。
スプレーで押さえてもピンピン出てくる。
この記事では、産後に髪が抜ける理由と一般的な経過、そして美容師として実際にお客様へ提案している「生えてきてからの付き合い方」までお話しします。
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Table of Contents
産後に髪がたくさん抜けるのはなぜ?
産後に起こるまとまった抜け毛は、一般に「産後の休止期脱毛」などと呼ばれます。
髪には、
成長する
↓
成長が止まる
↓
休止する
↓
抜ける
という毛周期があります。
妊娠中はホルモンなどの影響によって、成長期にとどまる毛髪が増える方向に変化することが知られています。
そして出産後、妊娠中とはホルモン環境が大きく変化すると、毛周期も変わります。
その結果、妊娠中には抜けずに残っていた髪の一部が休止期へ移り、少し時間が経ってからまとまって抜けることがあります。
出産直後から一気に抜けるというより、数か月遅れて「急に抜け毛が増えた」と感じることがあるのはこのためです。
妊娠中は「髪が増えた」と感じることもある
この話は、美容師としてもかなり実感があります。
妊娠中のお客様を担当していると、
「最近、髪が多くなった気がする」
ということがあります。
僕自身、妊娠中のお客様の髪を触っていて、以前より抜けにくくなっているように感じることもあります。
すると当然、
「重いから、もう少し梳いてください」
という話にもなります。
でも僕は、妊娠中のお客様ほど、希望がなければ必要以上に梳きすぎないようにしています。
もちろん、お客様が軽くしたいなら希望に合わせます。
ただ、その先に産後の抜け毛が起こる可能性も考えておきたいからです。
妊娠中に「髪が多いから」とかなり梳いて、その後に抜け毛が増えると、さらに毛量が減ったように感じやすくなります。
今の毛量だけではなく、半年後くらいの髪も少し考えて切る。
長くお客様を担当する中で、自然と気をつけるようになったことです。
産後の抜け毛はいつから?いつまで続く?

個人差がありますが、産後の抜け毛は出産から数か月後に目立ち始めることがあります。
「出産したのは少し前なのに、どうして今になって?」
と不安になるかもしれませんが、髪の毛周期には時間差があるためです。
多くの場合は一時的な変化で、時間とともに抜け毛は落ち着き、新しい髪が伸びてきます。
産後すぐに以前のボリュームへ戻るわけではありませんが、子どもが1歳になる頃までに元のボリュームへ近づく女性も多いとされています。
だから僕も、産後のお客様から相談されたときは、
のぶさん
とお話ししています。
ただし、すべての抜け毛を「産後だから」と決めつけることはできません。
抜け毛が長く続いている、なかなかボリュームが戻らない、ほかにも体調で気になることがあるなど、不安が続く場合は医療機関へ相談してください。
鉄欠乏や甲状腺の病気など、産後とは別の原因による脱毛が隠れていることもあります。
美容室で多いのは「前髪と生え際」の相談
僕がサロンで産後のお客様から相談を受ける印象では、特に多いのが前頭部や生え際です。
「前髪が少なくなった気がする」
「生え際に短い毛がいっぱい出てきた」
「前髪の量を増やした方がいいですか?」
こうした相談をよく受けます。
もちろん、産後の抜け毛が前頭部だけに起こるという意味ではありません。
全体的に抜けていても、顔まわりや生え際は自分でも鏡で見えやすいため、変化に気づきやすい場所でもあります。
そして、ここから美容師としては少し違う問題が始まります。
実は「抜けている時」より「生えてきた時」が大変
抜け毛が増えている時期は、もちろん不安です。
でも髪型として扱いにくくなるのは、僕の経験では新しい髪が生えてきてからの方が多いと感じます。
生え際に短い毛がたくさん出てくる。
前髪の内側から短い毛が立ち上がる。
トップから短い毛がピンピン出てくる。
「じゃあ、前髪を厚くして隠しましょう」
と思うかもしれません。
ところが、これが簡単ではないこともあります。
前髪を増やすためには、少し後ろの髪を前髪として使いたい。
でも、そのトップの髪自体が産後の抜け毛から生えてきたばかりで短い。
前髪を増やしたいのに、前髪にできる長さの髪がまだない。
そんな時期があるんです。
ゆっこさん
のぶさん
生え際の短い毛は、髪型とスタイリングで付き合う

ここは「早く伸ばす方法」を探すより、伸びるまでどう扱いやすくするかを考える方が現実的です。
前髪を作る
生え際の短い毛が気になる場合、前髪を作ってなじませる方法があります。
ただし、先ほどお話ししたように、前髪にしたい髪そのものがまだ短いこともあります。
無理に厚い前髪を作るのではなく、今ある長さを見ながらデザインします。
短い毛を活かして、少し短めの前髪にすることもあります。
顔まわりまで含めて考える
短い前髪になった場合は、前髪だけで考えなくても大丈夫です。
顔まわりの髪の流れを作ったり、眉の見え方を整えたりすると、全体の印象は変えられます。
僕はショートバングになるお客様には、眉のデザインについてお話ししたり、顔まわりのスタイリングをお伝えしたりすることもあります。
「短い毛を隠す」だけではなく、今の長さで似合うバランスを探すという考え方です。
ピンピン出る毛はスタイリング剤で押さえる
生えてきた短い毛が表面から出てくる時期は、スプレーやバームなどを使って整える方法もあります。
ずっとこの長さのままではありません。
伸びてなじむまでの期間だけ、少しスタイリングの力を借りましょう。
なお、生え際に短い毛が増える理由は産後だけではありません。毎日のように髪を強く結ぶ習慣など、別の原因が関係していることもあります。
生え際の短い毛や、髪を結ぶ習慣との関係については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
「短く切ったら抜け毛は減りますか?」
これも実際によく聞かれます。
「めちゃくちゃ抜けるので、短くした方がいいですかね?」
排水口に長い髪がたくさん溜まると、余計に抜け毛が増えたように感じますよね。
ただ、髪を短く切ることで産後の抜け毛そのものを止められるわけではありません。
短くするメリットがあるとすれば、
乾かす時間を短くできる。
抜けた長い髪が絡みにくくなる。
お風呂や掃除の負担を少し減らせる。
といった、日々の扱いやすさです。
赤ちゃんのお世話で自分の髪にかける時間を減らしたいなら、短くするのも一つ。
逆に、結べる方がラクなら無理に切る必要はありません。
「産後だからショートにした方がいい」ではなく、今の生活でどちらがラクかで決めていいと思います。
産後の抜け毛を止めるために、頑張りすぎなくていい
以前の僕なら、
食事を整えましょう。
睡眠を取りましょう。
シャンプーを見直しましょう。
そんな話をたくさんしていたかもしれません。
もちろん、産後の身体をいたわることは大切です。
でも赤ちゃんがいる生活の中で、
「しっかり寝てください」
と言われても、できない日がありますよね。
産後の抜け毛は、シャンプーを変えれば簡単に止められるようなものではありません。
食事や睡眠を「髪を早く戻すための宿題」にする必要もないと僕は思っています。
まずは、お子さんとの生活とご自身の身体を大切にしてください。
髪については、美容師に任せられるところもあります。
生えてきた時にしたい髪型を、今から考えておきましょう
産後に髪が抜けると、
「このまま戻らなかったらどうしよう」
と不安になると思います。
でも美容室では、その後も見ています。
抜け毛が落ち着く。
短い毛が出てくる。
その毛が少しずつ伸びる。
前髪に入れられるようになる。
また髪型の選択肢が増えてくる。
長く担当しているお客様なら、その変化を一緒に見ていくことができます。
だから、抜けている今だけを見て髪型を決めなくても大丈夫です。
伸びてきた時に、どんな髪型にしたいか。
それを今のうちから美容師と少し話しておくのもいいと思います。
産後は、髪のこと以外にも考えることがたくさんあります。
まずは気楽に。
お子さんのこと、そしてご自身のケアをなさってください。
髪が伸びてきたら、その時の長さでできることを、また一緒に考えましょう。

