美容室で椅子に座ると、美容師から「今日はどうされますか?」と聞かれますよね。
でも実は、その質問をする前から、美容師の頭の中ではいろいろなことを考えています。
「前回のカットから、どれくらい伸びたのかな?」
「前髪、自分で切ったのかな?」
「耳の後ろに、少し重みがたまってきたかな?」
髪を見ながら、そんなことを考えているんです。
もちろん、美容師によって見るところや考え方は違います。今回は、現役美容師の僕が、お客様の髪を見ながら何を考え、どんなふうに会話をしているのかを、少しお話ししてみたいと思います。
普段はなかなか見えない、美容師の頭の中のお話です。
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美容師は、まず髪の「これまで」を見ている

初めて担当するお客様の髪を見るとき、僕が気になるのは、今の髪型がどんな状態になっているかということです。
たとえば、前回のカットからどれくらい時間がたっているのか。
前髪の長さや厚み、幅はどうなっているのか。
自分で前髪を切ったような形跡はないかな?
セルフカラーをしているのかな?
そして、今の髪型のウェイト、つまり重さの位置がどこにあるのかも確認します。
髪は伸びると、単純に長くなるだけではありません。
カットしたときのシルエットが少しずつ変わり、重みのたまる場所も変化していきます。
特にショートヘアでは、耳の後ろや襟足など、少しの変化が扱いやすさに影響することもあります。
そうした状態を見ながら、前回のカットから今日までに何が起きたのかを考えています。
髪を見ていると、お客様が気にしていそうな部分が、なんとなく見えてくることがあります。
そんなときは、あまり堅苦しくならないように、気軽に聞いてみます。
のぶさん
すると、「そうそう、そこが気になってたんです!」という反応が返ってくることも少なくありません。
もちろん、占い師ではないので、何でもわかるわけではありません(笑)。
ただ、髪の状態から考えられる悩みを、少し先回りして聞いてみるんです。
お客様にとっても、自分からうまく説明する前に気になるところを聞いてもらえると、安心につながるのではないかと思っています。
「あ、この美容師さん、わかってくれているかも」
そう感じてもらえたら、そこから相談もしやすくなりますよね。
大切なのは、悩みを言い当てることではなく、気軽に話してもらえるきっかけをつくることだと思っています。
初めてのお客様と、長年のお客様では会話が違う
初めて担当するお客様の場合、まだお互いのことをよく知りません。
髪の悩みも、普段のお手入れも、好きな髪型も、少しずつ聞いていく必要があります。
でも、最初から質問ばかりするのも、なんだか面接のようになってしまいますよね。
だから僕は、髪を見て気づいたことを会話のきっかけにすることがあります。
「このあたり、最近まとまりにくくなっていません?」
そんな一言から、普段のお手入れや気になっていることを自然に話してもらえる場合もあります。
もちろん、こちらの予想が必ず当たるわけではありません。
お客様の答えを聞きながら、本当に困っていることを確認していきます。
一方で、何年も担当しているお客様との会話は、少し違います。
「最近、寒くなりましたね。風邪とか引いてません?」
「秋は行事が多いですよね」
そんな季節や日常の話から始まることも多いんです。
長く担当しているお客様の場合、普段の髪型や好み、お手入れの仕方など、ある程度わかっていることがあります。
それなのに毎回、「普段はどうされていますか?」「どこが気になりますか?」と一から聞いていると、かえって不思議に思われるかもしれません。
もちろん、髪の状態は毎回確認しています。
ただ、何でも言葉にして質問する必要はないと思っています。
以前話したことや、ちょっとした日常の出来事を覚えている。
それも、お客様との関係をつくる大切な要素です。
会話を覚えてもらえていることが、「自分のことをわかってくれている」という安心感につながる場合もあるのではないでしょうか。
もちろん、会話を覚えていることと、美容技術が優れていることは別の話です。
でも、長くお付き合いするなかでは、そうした小さな積み重ねも大切だと感じています。
「今回はすくだけでいい」の裏側

長年担当しているお客様と、こんな会話をすることがあります。
ゆっこさん
特にショートヘアのお客様では、よくあるお話です。
ショートヘアの場合、耳への髪の当たり方や、耳の後ろの厚みなどで、伸び具合を感じる方もいらっしゃいます。
そこがまだ気にならないと、「今回はあまり伸びていない」という感覚になることもあるようです。
また、カラーとカットのタイミングがいつも同じとは限りません。
白髪や根元のカラーが気になって、いつもより早めに美容室へ来られることもあります。
そんなときは、
のぶさん
といった相談をします。
お客様の「まだそんなに伸びていない」という感覚も、決して間違いではありません。
ただ、美容師が見ると、長さや重さのバランスには少し変化が出ていることもあるんです。
「今回はすくだけでいいですよ」
そんな相談になることもあります。
ただし、ここでいう「すくだけ」は、必ずしも長さをまったく切らないという意味ではありません。
たとえば、重みがたまりやすい耳の後ろ。
襟にかかる襟足。
そして、髪型全体のフォルムに関わる部分。
こうした場所は、必要に応じて長さを整えます。
そのうえで、重くなっている部分の毛量を調整することもあります。
大切なのは、今の髪型を大きく変えずに、扱いやすい状態へ整えること。
お客様の「すくだけでいい」という言葉の奥には、「今の髪型は気に入っているから、あまり変えたくない」という気持ちがある場合もあります。
だからこそ、どこを残して、どこを整えるのかを考える必要があるんです。
美容師が「それはやめましょう」と言う理由
長年担当しているお客様には、ときどき、かなりはっきり意見を伝えることもあります。
たとえば、前髪の幅を広げたいという相談。
前髪から顔まわりの後れ毛につながるデザインでは、幅や長さ、段差のつけ方によって印象が変わります。
前髪を広く取りすぎたり、後れ毛との段差を大きくしすぎたりすると、全体のバランスが崩れて見えることもあります。
そんなときは、
「それはやめといた方がいいですよ」
「ちょっと変になりますよ」
と、かなりはっきりお伝えすることもあります。
もちろん、誰にでも同じ言い方をするわけではありません。
長年担当していて、お互いの好みや会話の距離感がわかっているからこその言い方です。
希望を否定したいのではなく、仕上がりを想像したときに気になることがあれば、先に伝えておきたいんです。
前髪の長さでも、似たようなことがあります。
ゆっこさん
そんな相談を受けることがあります。
もちろん、眉上の短い前髪が似合う方もいらっしゃいます。
ただ、その方の普段の雰囲気や髪型によっては、短くすることで可愛らしい印象が強くなりすぎる場合もあります。
そんなとき、僕はこんなふうに言うことがあります。
のぶさん
一見、褒めているようですが(笑)。
ここで伝えたいのは、「今までよりも、かなり可愛らしい雰囲気になりますよ」ということ。
関西の美容室だからこその言い回しかもしれませんね。
でも、これは単なる冗談ではありません。
お客様が本当に解決したいのは、「前髪が目にかかって邪魔」ということかもしれません。
それなら、必ずしも眉よりずっと上まで短くする必要はない場合もあります。
目にかからない長さと、その方に似合うバランス。
その両方を考えて、どこまで切るのがいいかを提案しています。
もちろん、十分に相談したうえで、それでも短くしたいという希望があれば、その気持ちも尊重します。
美容師の好みだけで髪型を決めるわけではありませんからね。
美容師は、希望を叶えながら、その先の毎日も考えている
美容師の仕事は、お客様の希望をそのまま形にすることだけではないと思っています。
「短くしたい」
「軽くしたい」
「前髪を広げたい」
その言葉の奥に、どんな悩みや希望があるのか。
そして、実際にその髪型にしたら、明日からどんなふうに過ごすことになるのか。
そんなことも考えています。
たとえば、短くしすぎると扱いにくくなるかもしれない。
毛量を取りすぎると、かえってまとまりにくくなるかもしれない。
顔まわりのデザインを変えると、今までと印象が大きく変わるかもしれない。
そうしたことが予想できるなら、事前にお伝えしたいんです。
もちろん、最後はお客様がどうしたいかも大切です。
美容師としての意見を伝えながら、お客様の希望とすり合わせていく。
そのやり取りも、カットの大切な一部分だと思っています。
まとめ|髪型の相談は、うまく説明できなくても大丈夫
美容師は、髪を切る前からいろいろなことを考えています。
前回のカットからどれくらい伸びたのか。
今の髪型のどこに重みがたまっているのか。
お客様は何を気にしているのか。
そして、どんな仕上がりなら、毎日を気持ちよく過ごせそうなのか。
もちろん、美容師によって考え方は違いますし、髪を見ただけですべてがわかるわけではありません。
でも、お客様がうまく説明できない悩みを、一緒に整理することはできます。
「なんとなく重くなってきた」
「前髪が邪魔になってきた」
「今の髪型は好きだけど、少しだけ変えたい」
そんな言葉だけでも、十分な相談のきっかけになります。
美容室では、最初から理想の髪型を完璧に説明しようとしなくても大丈夫。
髪を見ながら、話をしながら、一緒に考えていけたらいいと思っています。
