「髪質改善トリートメントで、くせ毛が扱いやすくなる」
そんなメニューとして、一時期かなり注目されたのが酸熱トリートメントです。
僕の美容室でも以前、グリオキシル酸をメインにした酸熱系の施術を扱っていました。
そして最初に書いておきたいのですが、
仕上がりは、かなり良かったです。
特にツヤ。
美容師として施術していても、はっきり違いを感じるくらいでした。
お客様からも「施術後はブローしやすかった」という声があり、当時は僕自身も魅力のある技術だと感じていました。
それでも現在、僕の美容室ではグリオキシル酸を使った酸熱トリートメントをやめています。
理由は効果がなかったからではありません。
安全性に不安を感じたからです。
この記事では、酸熱トリートメントを実際に扱っていた美容師として感じたメリットと、なぜ使用をやめたのか。
そして現在は「髪質改善」をどう考えているのかまで、改めて整理します。
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Table of Contents
1.酸熱トリートメントとは?
酸熱トリートメントは、有機酸などを使った薬剤と熱処理を組み合わせ、髪の質感やまとまり、ツヤなどを整える施術の総称として美容室で広まったものです。
ただし、「酸熱トリートメント」という名前だけで、すべて同じ施術だと思わないほうがいいでしょう。
使われる成分や濃度、施術工程は製品によって異なります。
そして、特に酸熱トリートメントが広く知られるようになった頃によく使われていた成分のひとつがグリオキシル酸です。
僕の美容室でも、このグリオキシル酸をメインにしたものを扱っていました。
2.実際にやってみて、ツヤは圧倒的でした
ここは、今になって悪く書き換えるつもりはありません。
グリオキシル酸系の酸熱トリートメントは、僕自身かなり仕上がりを感じていました。
特に印象的だったのはツヤです。
施術してアイロンまで終わったときの見た目は、とてもきれいでした。
また、くせ毛のお客様からは、施術後に「ブローしやすくなった」という声もありました。
ただし、ここは少し言葉を分けて考える必要があります。
「ブローしやすくなった」ことと、「くせ毛が治った」ことは同じではありません。
酸熱トリートメントは、縮毛矯正と同じ施術ではありません。
髪の質感やまとまりを整えたいのか。
くせそのものをしっかり伸ばしたいのか。
ここを曖昧にして「髪質改善なら全部同じ」と考えてしまうと、施術選びも分かりにくくなります。
3.それでも、僕はグリオキシル酸系の酸熱をやめました

仕上がりには満足していました。
それでも、僕の美容室ではグリオキシル酸系の酸熱トリートメントをやめました。
きっかけは、安全性への不安です。
ここは誤解のないように書いておきます。
僕自身、薬剤を素手で触ったことで刺激を感じた、施術中に体調が悪くなった、といった経験があったわけではありません。
一方で、施術中に気になっていたことはありました。
それが、アイロン工程で出る蒸気とニオイです。
のぶさん
美容室が広くても、換気をしていても、空気中に何がどのくらいあるのかは目では見えません。
そして美容師は、お客様のように一度施術を受ける側ではありません。
仕事として、繰り返し薬剤を扱います。
「お客様だけではなく、毎日施術するスタッフ側はどうなんだろう?」
僕はそこが気になりました。
仕上がりがいいことと、スタッフが仕事として継続して扱いたい薬剤かどうか。
これは別の問題だと考えています。
4.グリオキシル酸の安全性について、現在わかっていること
ここは、美容師個人の感覚と現在の研究を分けて考える必要があります。
近年、グリオキシル酸を含む一部のヘアストレート製品の使用後に、急性腎障害が起きた症例が報告されています。
研究では、皮膚から吸収されたグリオキシル酸が体内でシュウ酸へ代謝され、シュウ酸カルシウムの結晶形成につながる可能性が検討されています。
こうした報告を受け、フランスの食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、グリオキシル酸を含むストレート製品について注意を呼びかけました。
EUでも、ヘアストレート製品に使用されるグリオキシル酸について、消費者だけでなく美容師などの専門職を含めた安全性評価を進めるため、科学的データの収集が行われています。
一方で、実際の施術条件を想定してグリオキシル酸や加熱時に生じる物質への曝露量を測定し、消費者・美容師とも健康上の懸念を示すレベルではなかったとする2026年の研究もあります。
つまり現時点で、
「グリオキシル酸を使った施術はすべて危険」
と一言で断定できる状況ではありません。
反対に、
「絶対に安全だから心配する必要はない」
とも僕は言い切りません。
安全性について検討が続いている成分だからこそ、僕の美容室ではスタッフが繰り返し扱うことまで考え、使用を続けないという判断をしました。
これはグリオキシル酸を使うすべての美容室を否定する話ではなく、僕自身のサロンで採用する薬剤についての判断です。
5.では、今は「髪質改善」をやっていないの?
グリオキシル酸系の酸熱トリートメントをやめたからといって、髪質改善そのものをやめたわけではありません。
むしろ今は、
「お客様が何を改善したいのか」で施術を分ける
という考え方をしています。
僕の美容室では、髪質改善を目的とした施術なら、現在はトステアやレブリン酸などを使ったケアを選択肢にしています。
カラー施術と並行して進めることもあります。
昔のように「酸熱トリートメント」というひとつの名前で全部まとめるより、
ツヤがほしいのか。
まとまりがほしいのか。
ダメージケアをしたいのか。
それとも、くせそのものを伸ばしたいのか。
目的から逆算したほうが、施術は選びやすいと思っています。
6.トステアやレブリン酸という選択肢
近年、髪質改善系の施術で使われる成分にも新しい選択肢が増えています。
トステア
「トステア」は、アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウムというヘアコンディショニング成分です。
毛髪内部への浸透や、毛髪内部のケラチン線維の構造変化について研究されており、うねりの補正を目的としたヘアケアにも利用されています。
ただし、
「トステアを使えば縮毛矯正のようにくせ毛が真っ直ぐになる」
という意味ではありません。
あくまで髪の質感やうねり、扱いやすさを整えるための選択肢として考えています。
レブリン酸
レブリン酸も、酸熱系を含む髪質改善・毛髪補修の分野で使われている有機酸のひとつです。
近年の研究では、毛髪内部への浸透や、熱処理によるダメージに対する毛髪強度への作用なども検討されています。
僕の美容室では、こうした成分をカラーと組み合わせながら、髪の状態や求める仕上がりに合わせて使っています。
大切なのは、
「新しい成分だから絶対に安全・絶対に優秀」
と考えないこと。
髪質改善という言葉よりも、どんな薬剤を、何の目的で、どう使っているのかを見るほうが大切です。
トステアやレブリン酸について、「そもそもどんな成分なの?」というところから知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→ 40代のうねり毛・パサつき|話題の髪質改善成分「トステア」「レブリン酸」って何?
7.くせをきちんと伸ばしたいなら、酸性ストレート
ここは僕の中ではかなり明確です。
「髪を扱いやすくしたい」なら、トリートメント系の髪質改善が選択肢になる。
一方、
「くせをしっかり伸ばしたい」「仕上がりをきちんと完成させたい」なら、僕は酸性ストレートを提案します。
ゆっこさん
のぶさん
髪質改善とストレートは、似たような仕上がり写真で紹介されることもありますが、目的は同じではありません。
「まとまりや扱いやすさを整えたい」のか、「くせをきちんと伸ばしたい」のかで、僕なら施術を分けて考えます。
→ 昔のストレートパーマで針金みたいになった人へ。今の縮毛矯正が「まるで地毛」のように柔らかく仕上がる理由
「髪質改善」という言葉は、とても便利です。
だからこそ、美容室によって中身がまったく違うことがあります。
トリートメントなのか。
酸を利用した施術なのか。
ストレートなのか。
カラーと組み合わせたケアなのか。
メニュー名だけでなく、何をする施術なのかを美容師に聞いてみることをおすすめします。
8.昔の記事を書いた頃と、僕の考えも変わりました
この記事は、以前公開していた酸熱トリートメントの記事を大幅に書き直したものです。
当時の僕は、実際にグリオキシル酸系の酸熱トリートメントを扱っていました。
ツヤも出る。
お客様から扱いやすくなったという声もある。
だから、その良さを記事に書いていました。
その評価自体を、今になってなかったことにするつもりはありません。
当時、僕は本当にいい仕上がりだと思っていました。
ただ、美容の技術も薬剤も、情報も変わっていきます。
新しい研究や安全性に関する情報が出てきたら、美容師側の判断も変わることがあります。
僕の場合は、
仕上がりの良さよりも、スタッフが繰り返し扱うことへの不安を無視できなくなった。
だからやめました。
そして今は、トステアやレブリン酸などを使った髪質改善と、くせをきちんと伸ばす酸性ストレートを、目的によって使い分けています。
9.「髪質改善」という名前より、何を改善したいか

酸熱トリートメントがいい。
トステアがいい。
酸性ストレートがいい。
そうやって施術名から選ぶより、まず美容師に、
「私は何を改善したいのか」
を伝えてみてください。
ツヤがほしい。
広がりを抑えたい。
ブローを楽にしたい。
ダメージした髪を扱いやすくしたい。
くせをしっかり伸ばしたい。
目的が違えば、選ぶ施術も変わります。
美容室では、施術名まで自分で決めていかなくても大丈夫です。
「髪質改善がしたい」だけでなく、「朝のブローを楽にしたい」「広がりを抑えたい」「くせは伸ばしたいけど、真っ直ぐすぎるのは嫌」など、困っていることや、なりたい状態をそのまま伝えてもらうほうが、美容師は施術を提案しやすくなります。
美容室で何をどう伝えればいいか迷う方は、こちらも参考にしてください。
→ 「おまかせ」「2センチ」「軽くして」美容師に伝わりそうで実は困るオーダーの話
もこちゃん
のぶさん
僕自身も、以前使っていた技術を「昔は間違っていた」で片づけるのではなく、そのとき良いと思った理由と、今使わなくなった理由の両方を伝えていきたいと思っています。
美容師として扱える選択肢は、これからも変わっていくはずです。
だからこそ、その時点で髪の状態と目的を見ながら、納得できる方法を一緒に選ぶ。
それが一番大切だと思っています。

