年齢とともに、
「髪が細くなった気がする」
「以前よりボリュームが出にくい」
「抜け毛や白髪が気になる」
そんな変化を感じる人は少なくありません。
美容やエイジングケアについて調べていると、その原因のひとつとして「糖化」という言葉を目にすることがあります。
糖化は「体のコゲ」と表現されることもあり、
「頭皮が糖化すると薄毛になる」
「糖化によって白髪が増える」
「抗糖化すれば抜け毛を予防できる」
といった説明まで見かけます。
でも、本当にそこまで言い切れるのでしょうか。
この記事では、糖化と髪・頭皮について現在どこまで研究されているのかを確認しながら、美容師の立場から整理してみます。
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Table of Contents
そもそも「糖化」とは?

糖化とは、糖が体内のタンパク質などと反応する現象です。
その反応が進む過程で、AGEs(Advanced Glycation End Products/終末糖化産物)と呼ばれる物質が生成されます。
AGEsは加齢などに伴って体内に蓄積し、皮膚を含めさまざまな組織との関係が研究されています。
美容分野では「糖化=老化」という非常にシンプルな説明をされることもありますが、実際の老化現象は糖化だけで説明できるものではありません。
髪や頭皮について考えるときも、まずここを分けて考える必要があります。
頭皮にもAGEsは蓄積する?
頭皮とAGEsの関係については、人を対象とした研究もあります。
20代と50代の男女200人を比較した研究では、頭皮の皮脂量、pH、硬さ、色調、毛髪密度など、さまざまな項目が調べられました。
そのうち女性60人についてAGEsの蓄積を測定したところ、50代では20代よりAGEsの蓄積が多く、頭皮の黄みとの関連も確認されています。
一方で、同じ研究では50代の男女で毛髪密度が低下していました。
ここだけを見ると、
「AGEsが増えたから髪が減った」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、この研究から確認できるのは年齢によってAGEsの蓄積や毛髪密度などに違いが見られたことです。
AGEsの増加が毛髪密度低下の原因だった、と証明した研究ではありません。
糖化と毛包の関係も研究されている
では、糖化と髪にはまったく関係がないのでしょうか。
そうとも言い切れません。
毛髪を作る毛包や毛乳頭細胞とAGEsの関係については、細胞や動物モデルなどを使った基礎研究が行われています。
AGEsが毛包内の細胞同士の相互作用へ影響したという報告や、AGEの一種であるCMLが毛乳頭細胞の増殖・移動や毛包形成へ影響したという研究があります。
つまり、
「糖化と毛包の関係を研究する根拠がまったくない」わけではありません。
ただし、ここで注意したいのが研究の段階です。
培養細胞や動物を使った研究で変化が確認されたからといって、そのまま
「人間は糖化すると薄毛になる」
とは言えません。
基礎研究で見つかったメカニズムと、実際の人間で起こる薄毛や抜け毛の原因は分けて考える必要があります。
毛髪そのものからAGEsを測定する研究も
さらに近年では、毛髪そのものに含まれるAGEsを測定する研究も行われています。
2025年に報告された研究では、人の毛髪から複数のAGEsを測定。
30〜60代の健康な日本人女性30人を調べたところ、AGEの一種CMLなど一部の指標では年齢との正の相関が確認されました。
「髪の中にもAGEsが存在し、その一部が年齢とともに増える傾向がある」というのは興味深い結果です。
ただし、この研究も、
AGEsが増えたから白髪になった、髪が細くなった、抜け毛が増えた
ことを証明したものではありません。
糖化と毛髪の関係については研究が進んでいますが、分かっていることと推測されていることを混ぜないようにしたいところです。
「糖化=薄毛・抜け毛の原因」とは言い切れない
ここまでを整理すると、
- AGEが頭皮に蓄積することは確認されている
- 年齢によって頭皮のAGE蓄積量に違いが見られた研究がある
- 毛包・毛乳頭細胞とAGEsの関係を調べた基礎研究がある
- 毛髪そのものからAGEsを検出した研究もある
というところまでは確認できます。
しかし、
「糖化が女性の薄毛や抜け毛を直接引き起こす」
とまで単純化できる段階ではありません。
髪の変化には加齢だけでなく、遺伝的要因、ホルモン、毛周期、薬剤施術、日々のヘアケアなど、さまざまな要素が関係します。
実際、髪の老化そのものについても、毛包の小型化や色素の変化、毛髪そのものの質的変化など複数の現象を含むものとして研究されています。
だから「最近髪が減った気がする」という人に、
「それ、糖化が原因ですよ」
と美容師が決めつけることはできません。
ゆっこさん
のぶさん
抜け毛が気になるという人はこちらの記事も参考にしてみてください。
では「抗糖化」のために何かしたほうがいい?
ここも慎重に考えたいところです。
糖化について調べると、
「この食べ物を食べる」
「このお茶を飲む」
「この成分を頭皮につける」
といった対策がたくさん出てきます。
でも、特定の食品やお茶を摂ったからといって、それだけで薄毛や白髪を防げるとは言えません。
まして美容師が、
「この食品を摂れば抜け毛予防になります」
といった指導をするのは、僕の仕事の範囲を超えていると思っています。
髪のためだけに特別な「抗糖化生活」を始めるというより、まずは一般的な健康管理を大切にする。
そのうえで美容師としてできるのは、今ある髪や頭皮の状態を確認しながら、必要なヘアケアや施術を考えることです。
美容師として見ているのは「糖化」ではなく、今の髪
美容室で僕たちが直接見ることができるのは、AGEsの量ではありません。
髪の太さやボリューム、ツヤ、乾燥、頭皮の状態。
そして、カラーや縮毛矯正など、これまでどんな施術をしてきたかです。
「最近、髪が細くなった」
「分け目が気になってきた」
「以前より抜け毛が多い気がする」
そんな変化があれば、美容師に相談してもらうのはいいと思います。
髪型や施術、日常のヘアケアからできることもあります。
ただし、急激な抜け毛や明らかな脱毛、頭皮の炎症などがある場合は、美容室だけで判断せず医療機関へ相談してください。
→ 年齢による髪の変化・毛量減少についてはこちらを参考ください。
まとめ|糖化と髪は「研究されている。でも原因と決めつけない」
糖化によって生成されるAGEsと、頭皮や毛包、毛髪との関係についてはさまざまな研究があります。
人の頭皮でAGEsの蓄積が確認された研究もあり、毛包への影響を調べた基礎研究や、毛髪そのもののAGEsを測定した研究もあります。
だから、
「糖化と髪にはまったく関係がない」
と切り捨てる必要はありません。
一方で、
「糖化が薄毛・白髪・抜け毛の原因」
と一つの答えにしてしまうのも、現在分かっていることより話を進めすぎています。
美容の世界では、新しい研究や成分が出てくると、分かりやすい一つの原因にまとめたくなることがあります。
でも髪の変化は、そんなに単純ではありません。
研究は研究として興味深く見る。
そして実際の髪については、年齢、髪質、施術履歴、日々の変化を一つずつ見ながら考える。
美容師としては、そのくらいの距離感で「糖化」と付き合うのがちょうどいいと思っています。

